【後編】映画衣装職人・池田誠さん講演会体験レポート―名作映画にかけた思いとは?
- 編集 さささんぽ
- 7月18日
- 読了時間: 7分
前回の加藤さんへのインタビューに引き続き、今回は池田誠さんの講演会当日の体験レポートをお送りします!
(前編はこちら:【前編】映画と地域をつなぐ想い―講演会主催者・加藤雅也さんインタビュー )
・池田誠さんの紹介
ここで今回の講演会を引き受けてくださった池田誠さんのご紹介をいたします!
1936年、岡山県笠岡市神島に生まれました。東宝撮影所時代には、黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』で初めて映画衣装の仕事に関わり、『日本のいちばん長い日』のような戦争映画から時代劇『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』、喜劇映画『ホラ吹き太閤記』、さらに『キングコング対ゴジラ』といった怪獣映画まで多彩な映画衣装を数多く手がけられました。
そして三船プロダクション時代には、ロケが行われた豊川市で現在も親しまれる『黒部の太陽』や、海外スター俳優との共演が話題になった『レッド・サン』などの衣装を担当していました。
以下の映画年表は、池田さんが関わった53作品です。

また、東京ディズニーランドの創設時には衣装制作責任者を務めていました。オープン前にディズニーの本国である米国ディズニーランドで9ヶ月間研修を受け、衣装制作に関するノウハウを習得し帰国されました。その後、東京ディズニーランド開園時には、すべてのキャスト衣装を統括されました。5周年後、営業部に移りパークのイベントとして『アラジンの大冒険』『ミッキーマニア』等々を手掛け、ディズニーホテルに異動して定年まで勤め上げました。
このように池田さんは、高度経済成長期に人々の娯楽の中心にあった映画において、衣装の表現で作品の世界観を支えただけでなく、日本のエンターテイメントの象徴ともいえる東京ディズニーランドの舞台裏でも重要な役割を果たしていた方です。

・池田さんへのインタビュー
講演前に池田さんにインタビューすることができました。
Q1. 講演会の依頼を受けたとき、どんな気持ちでしたか?
やったろうか!という印象ですよ。一ついいところを見せてやろう!という感じかな。
Q2. 若い世代に期待することはなんですか?
自分の経験から言うと、やっぱり趣味を持つことだね。勉強以外になんでもいいので趣味を持つこと。絵を描くこと、ゴルフをすること、コレクションをすることも趣味になる。そして、同じ趣味を持った人とグループを作って情報交換をする。そうすると趣味を長く続けることができる。
Q3. 画集「夢のなかで夢をみる」については?
風景の絵や孫の絵をかいていたら40枚くらいたまったから画集として1000部刷ったが、一部も売れなかった。理由は、マーケットを理解できていなかったからだ。素人の絵では学べないが、絵を描いた時の心境や他人の感想を読むと学びがある。
Q4. 講演を通じて何を伝えたいですか?
今回は「勉強」ではなく「楽しんでもらうこと」を目的とした講演にしている。これまでに映画衣装を16年で61本携わってきた。その中で印象に残った映画の現場での裏話や俳優(石原裕次郎さん、三船敏郎さんなど)とのエピソードについて話そうと思っている。
映画や趣味、人生経験から、学ぶヒントを感じてほしいと思った。勉強は学校でやるもの。今日は人生の”味”を伝えたい。
池田さんの講演会開始です。
講演では、池田さん自身が携わった数々の名作映画の裏話を語ってくださいました。『隠し砦の三悪人』、『黒部の太陽』、『日本のいちばん長い日』など、多くの映画が紹介される中で、特に印象深かったのが、岡本喜八監督作品『肉弾』についてのお話です。
この作品は、愛知大学豊橋キャンパスの敷地で戦時中を過ごした岡本喜八監督の実体験をもとに描かれたもので、池田さんは、監督助手として参加されました。
池田さんは次のようにお話されました。
「『肉弾』は、岡本監督が工兵、特別講習、幹部候補生の時に体験した物語である。戦争を知らない若者たちへ、戦争がいかに愚かで無意味で悲惨な結果をもたらすか主人公の『あいつ』を通して伝えることを追い求めた作品である。
撮影は夏の日差しの中、汗だくになった監督やカメラマンの熱気であふれていた。苦しく楽しい山ロケが無事終わり、後半の撮影に拍車をかけようとした際に、驚くべき話が舞い込んできた。『三船プロの映画「風林火山」を稲垣浩監督が製作するので池田さんを返してほしい』と言われた。監督助手のため、プロデューサーの岡本みね子さん(岡本喜八監督の奥様)は断ったが、私は稲垣監督は映画界で自身を育ててくれた恩人だからと断れずに悩んでいた。しかし、私は入院をすることになり、結果として『肉弾』に熱中した。私が主人公の『あいつ』ではないかと錯覚するほどの作品であった」
複数作品について語られ、池田さんが映画人生を楽しんだ姿が伝わる講演となりました。

講演の後には、参加者との質疑応答の時間が設けられました。
Q.初めて見た映画は何ですか。
学校で行った高峰秀子主演の『二十四の瞳』とディズニー映画の『ジャングルブック』。
白黒映画に関しては、島生まれで映画館はなかったが、お寺の会場で流れていた無声映画を見ていた。現代ではありえないので、小さい頃の貴重な思い出となっている。
Q.人生を楽しく生きるためのコツは何ですか。
趣味を持ち、サークルに属して仲間を作る。仲間と意見交換をすることで趣味が長く続く。学校の勉強も大切だけど勉強以外の趣味を見つけること。
私が過去に集めた映画コレクションを次世代に引き継ぐために、オークションにかけたところ、100万円で売れた。このお金を資本金として、本を出版した。趣味から繋がっていく世界は面白い。
Q.映画界で尊敬している人は誰ですか。
黒澤明監督、稲垣浩監督、岡本喜八監督を尊敬している。この3人に出会わなかったら今日のような講演会は開けていない。今でも3人の夢を見るほどだ。
Q.映画界に入ってどうでしたか。
映画界で暮らして幸せだった。
ディズニーランドと関わったことも映画に匹敵するほどの楽しい人生だった。機会があったらみんなが知らない頭の中の資料を話したい。ディズニーは版権が厳しいので、みんなが知らない世界がいっぱいある。
Q.61本の映画の衣装を担当した中で、印象に残っている作品は何ですか。
『隠し砦の三悪人』『ゲンと不動明王』『忠臣蔵』『大盗賊』『佐々木小次郎』『黒部の太陽』『日本のいちばん長い日』『肉弾』『レッド・サン』『待ち伏せ』。
これらの作品は、50年経っても本に書いていると細かい情景まで思い浮かぶ。前日のご飯は覚えていないけど(笑)
Q.池田さんが関わった時代劇で、着物が似合う俳優さんは誰ですか。
三船敏郎さん。私が着付けの担当をしていた。着付けは着させる人と着る人の阿吽の呼吸で成り立つ。失敗の例として、役者に着物を脱がれたことがある。ただ上手く結ぶのではなくて、役に合わせた着付けをしなければならなかった。衣装1つでも奥深く、極めれば勉強になる。
質問コーナー後は、池田さんと参加者全員で写真撮影を行いました。とても貴重な一枚となり、思い出深い時間となりました。ありがとうございました。
さらに、池田さんから参加者全員に素敵なプレゼントが配られました。
内容は、池田さんの趣味の画集『夢のなかで夢をみる』、『グランドファイナル』です。


以上で講演会は終了です。
講演会後は豊橋キャンパスの学生や、愛大OBOGに昔から親しまれている喫茶店「カチカチ山」にて懇親会が開かれました。映画を趣味とする人々が集まって情報交換を行う、とても素敵な空間ですね。これぞ池田さんが人生を楽しく生きるコツの実践だと感じました。
主催者の加藤さんは、「豊橋にゆかりのある岡本喜八監督や戦争映画を知ってもらうこと」、「映画の話を通じて地域の方々に楽しんでもらうこと」を目的としていました。私自身、講演会に参加し、池田さんの実体験を聞くことで、戦時中を豊橋陸軍予備士官学校(現在の愛知大学豊橋キャンパス)で過ごした岡本喜八監督を知り、より親しみを感じました。そして、池田さんの携わった映画に強く興味を持ちました。
映画やディズニーランドに携わった池田さんのお話を聞くことができ、とても貴重な経験でした。池田さんからプレゼントしていただいた画集や本も大切に読みたいと思います。
講師の池田さん、加藤さんを始めとした主催者の皆様、ありがとうございました。
【取材・執筆】川口・滝川・三林
この記事は2025年6月の情報です。
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